TOMMY STYLE

日々感じたことを綴ります。

個人と社会の関係性

「個体は社会から逃げられない」

 

この言葉は、先日から読んでいる働かないアリに意義がある (中経の文庫)からの一文です。私は、「なぜ働きアリの中にも働かないアリがいるのだろうか?」という疑問を持って読み始めたのですが、それとは別の部分であるこの一文が妙に引っかかりました。この一文が書かれた章では、個人(働きアリ)と社会(コロニー:巣)の関係性について、丁寧に述べられていますが、それはアリの世界だけでなく、人間の世界にも当てはまる深い示唆を与えてくれるのではないかと思いました。

そこで、その章の中で特に私が印象に残った部分を引用してみます。

 

このように、所属する集団が他の集団とどのように対峙しているかは、集団に属する個人の運命を大きく左右します。私たち人間は個人と社会のあいだに存在する様々な軋轢から逃れることはできないのです。同時に、集団の性質は、構成員個人の意志と行動によって決まっていくものでもあります。ということは、個人が社会へのかかわり方を変えることで社会を変化させ、結果として個人の生活を変えるのも不可能ではありません。人間社会における政治は、まさにそのような働きをするものです。

 

とりわけ、太字部分が私にはとても印象的でした。一部上場の大企業といった、大きな社会の歯車として仕事をしていると、どうしても個人と社会の関係性というものが分かりにくくなってしまうことがあると思います。しかし、個人と社会の相互作用というのは、アリの世界であれ、人間の世界であれ存在しており、自分の身近なところにも常に存在しているのだということに改めて気付かされました。また、続きに

 

個人と社会は相互に影響を与え合いながら、二つの異なる「もの」として並行的に存在しており、個人と社会の利益のあいだには、食い違いが生じることがしばしばです。個人の利益だけを追求すると、他社との協同を必要とする社会がうまく機能しなくなります。かといって社会の利益を前面に押し出しすぎると個人の不満が鬱積し、社会に貢献しようという気運が薄れるため、これまた社会はうまく回らなくなります。この、個人と社会の関係のあり方が人生の複雑さを生み出しているのです。

 

 という一節がありますが、これも現代に生きる私達にとって、非常に示唆に富んだものであると思います。例えば、「~がしたい」と自分の要求ばかりを考え、周囲の人々や会社および社会全体の利益を考えないひとは、ただの自己中心的な人物とみなされ、会社の厄介者としての扱いを受けます。しかし、利潤を最大限にするべく、24時間365日働けというようなブラック企業では、その下で働いている個人の不満が高まり、結果としてその会社は行き詰まってしまいます。したがって、個人と社会の関係をいかに良好に保つかということが、アリであれ、人間であれ、どの世界においても求めらている共通の課題であるということが再認識されました。

 

 

働かないアリに意義がある (中経の文庫)

働かないアリに意義がある (中経の文庫)